奄美群島は、国内最大規模の亜熱帯照葉樹林、アマミノクロウサギなどの固有または希少動植物、世界的北限に位置する珊瑚礁、マングローブや干潟など多様な自然環境を有し、これらの自然環境が我が国を代表する景観を有する地域であるという評価で、平成29年3月7日、奄美群島国立公園に指定されました。

そして、国立公園の真ん中、奄美大島南部・大島海峡の海は、地形の変化に富んでおり、海峡内外に30ヵ所以上の国内屈指のダイビングポイントがあります。そしてそのポイントには、この奄美大島本島と加計呂麻島に狭まれた大島海峡は、一年を通じて、風や波が遮られ、ポイントが豊富なため、台風の日以外潜れない日がないほどです。

 



 

●奄美南部・大島海峡は新種の宝庫

 

 2011年、水中写真家、大方洋二が大島海峡の嘉鉄湾でミステリーサークルを作るフグを発見、このフグの貴重な生態を広めるため、

NHKに企画・提案し、翌2012年「ダーウィンが来た!」で長期取材が実現。その中で新種である判断し、魚類学者が調査・研究。

その結果、2014年新種記載され、和名はアマミホシゾラフグと命名された。その後、この大島海峡周辺には、数か所のミステリーサークルのポイントが発見されています。

最近になりオーストラリアでは水深100mの深さでフグが類似の産卵床を作ることが分かりました。アマミホシゾラフグの標本が沖縄の浜比嘉島で採取された例はあるものの、生きている姿が記録されているのは奄美大島周辺のみであり、なかでも大島海峡での発見例が多いです。

一方で、奄美大島周辺海域自体の生物多様性が高いこと、なかでも大島海峡の持つ生物多様性がとりわけ豊かであることが近年明らかになってきています。この海域では2018年にはアミトリセンベイサンゴの北限の分布が確認され、2020年11月にはツツナガレハナサンゴとツツコエダナガレハナサンゴが国内で初めて記録され、オオナガレハナサンゴが琉球列島で初めて記録されました。いずれのサンゴもIUCN(国際自然保護連合)が定めるレッドリストおよび環境省が定める海洋生物レッドリストに掲載されている希少な種です。その他、大島海峡にのみ記録があるスツボサンゴツノヤドカリや2020年12月発見された新種のホコサキキララハゼなど新たな生物種の発見が相次ぎ、この海域の生物多様性の高さを示しています。

その他、この大島海峡には、原生林に支えられた豊かなサンゴの海には、オオモンイザリウオ、ハナヒゲウツボ、ツバメウオなど、美しく魅力的な生物で満ち溢れています。

大きなクレバスや複雑に入り組んだ地形には、多様な生物が生息し、普段はなかなか目にすることのできないマクロ系の被写体をたっぷり撮影することができます。もちろん映画で有名になったクマノミも多種が生息し、かわいらしい姿をゆっくり観察できます。また、大島海峡の外は、アマミホールに代表される立体的な地形が広がり、美しい回遊魚の群れや珍しい生物に出会うことができます。(サークル写真は、水中写真家 大方洋二氏が2012年に撮影し世界に初めて発信した写真)